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■ 論文のプレプリントサーバー
科学者自身が電子メール住所を把握している研究者の数は、同じ分野の
ひとに限ってみてもほんの一握りであるのが普通です。世界中に
は、インターネットにアクセスできる同じ分野の科学者は数え切れな
い程います。プレプリントをできるだけ多くの同じ分野のひとに
送りたい時は、自分の持っているアドレス帳だけでは不充分です。
アメリカのロスアラモス国立研究所では、分野別のプレプリントサーバ
ー (http://xxx.lanl.gov/) を運営しています。プレプリントの
Title と Abstract を1日1回ずつ電子メールで配送するサービス
を受ければ、興味ある分野のプレプリントに関する情報を電子メー
ルで手に入れることが可能なのです。また、自分自身の投稿論文の
LaTeX ソースファイル を登録すれば、興味ある人は自分でプレプ
リントサーバーから取ってきて出力して読むことができます。
私が、プレプリントサーバーを使うことを覚えたのは1992年の春頃
でした。それまでは、高エネルギー物理が中心でしたが、この年に
cond-mat [condensed matter(凝集系物質)に関係する論文の要旨を
購読者に定期配送するプレプリントサーバーの名称] ができて、物性
研究のプレプリントが登録され始めました。理論の研究者は、物性の世界でも
新しいものにすぐなじんで使い出すようで、私の研究テーマである強相関系 (希土類化合物
のように強い電子相関をもつ系のことです。通常、金属中の電子はま
わりの電子との相関をもたない自由電子による系として記述すること
ができる) の著名な著者の論文が早速手に入り大変便利でした。
物性理論を研究する場合は、スーパーコンピューターを徹底して
使いこなさなければなりません。その波及効果として
計算機一般やネットワークにも結果的にくわしくなり、新しいものに
なじむのも早いといえるのかもしれません。最近では,A. B. Author:
cond-mat/9906xxx みたいな形で論文のリファレンスとして引用する
事例も普通になって来ました。
科学者は、研究成果を論文の形でまとめて学術雑誌に公表します。
論文が受け付けられ受理通知が来たあとや、研究者によっては、雑誌
に掲載可になった後にプレプリントを同じ分野の研究者に配布す
る習慣があります。プレプリントとは、前刷りのことをいいます。
出版前の論文を紙に印刷して同じ分野の研究者仲間に配
布し、研究速報の意味で知らせるのです。電子メールを使って論文
を投稿するときは、LaTeX (数式を含む文書を処理するシステムの
ことです。物理学などの自然科学分野では広く使われています。)
で書いた電子ファイルが良く使われます。同じ電子ファイルを知り
合いの電子メール住所に送れば、インターネットを通してプレプリ
ントを送ることが可能になるわけです。